犬に去勢・避妊手術をするメリット5つ

嬉しそうな犬
では、なぜ犬に去勢・避妊手術を受けさせるのでしょうか。去勢・避妊手術のメリットについて紹介します。

メリット1.望まぬ妊娠・出産を防げる

メス犬には1年に1~2回の発情期があります。もし発情期のタイミングでドッグランや散歩に行った場合、目を離したすきに交尾し、妊娠してしまう可能性も否定できません。
犬は一度の出産で数匹の犬を産みますが、すべてを自分で飼うことは飼育環境的にも経済的にも厳しいものがあります。

また、「犬は安産」というイメージがあるかもしれませんが、妊娠や出産にリスクはつきものです。とくにパグ、チワワ、フレンチブルドッグなどの小型で頭の大きな犬種は難産になりやすく、帝王切開になるケースが多いといわれています。

母犬への負担や、産まれてくる命のことを考えれば、去勢・避妊手術を受けさせることも飼い主の責任といえるでしょう。

メリット2.発情のストレスを軽減できる

発情期を迎えたメス犬は、交尾への欲求が高まります。
この欲求が満たせないとストレスによって落ち着きがなくなったり、攻撃的になったり、元気や食欲がなくなったりすることがあります。
また、オス犬に決まった発情期はないものの、発情中のメス犬のフェロモンによって誘発されます。
オス犬もメス犬と同様、発情した際に交尾ができないとストレスを溜めてしまいます

こういった発情におけるストレスは、去勢・避妊手術によって防ぐことが可能です。

メリット3.病気の発症リスクを抑えられる

去勢・避妊手術をすることで、下記のような病気の予防にもにつながるといわれています。

  • 精巣腫瘍
  • 会陰ヘルニア
  • 前立腺肥大
  • 肛門周囲腺腫
  • 乳腺腫瘍
  • 子宮蓄膿症
  • 子宮内膜炎
  • 子宮・卵巣の腫瘍

病気の予防は、犬の健康寿命を延ばすことにもつながり、実際に避妊・去勢手術をした犬のほうが平均寿命が2年ほど長いという説もあります。

メリット4.ヒート(生理)にまつわるトラブルを回避できる

犬種を問わず、すべてのメス犬には生理(ヒート)がありますが、避妊手術をすると卵巣がなくなるので生理はなくなります
ヒートによる出血でソファやカーペットが汚れたり、おむつやショーツでかぶれたりする可能性があります。
また、ヒート中に分泌されるフェロモンにより、オスの犬を引き寄せてしまうので、散歩やお出かけの場所、時間帯も考慮しなければいけません。

しかし、避妊手術をすればヒートがなくなるので、そういった心配の必要もなくなります。

メリット5.問題行動が減る

成熟期を迎えた犬は、ホルモン増加の影響により、マウンティングやマーキングをしたり、攻撃性を見せたりすることがあります。
マウンティングやマーキングはオス犬だけでなく、メス犬にも見られます。

こうした問題行動は、去勢・避妊手術によってホルモンの分泌が抑制されると、減少する可能性があります

犬に去勢・避妊手術をするデメリット3つ

体調が悪そうな犬
さまざまなメリットがある去勢・避妊手術ですが、下記のようなことが起きる可能性もあります。

デメリット1.性格・行動が変わる犬もいる

手術によって性ホルモンの分泌が止まるため、愛犬の性格や行動が変わるという説があります
「オス犬の気性が穏やかになった」「メス犬が甘えん坊になった」などといった変化がありますが、なかにはその変化を歓迎できない飼い主さんもいるようです。
ただし、愛犬の性格・行動が変わることと、去勢・避妊手術との関連性ははっきりしていません。手術前後でとくに変化の見られない子もおり、個体差があります。

アニコム パフェ Y.N

アニコム パフェ Y.N

去勢・避妊手術をすることで、性ホルモンに関連する性格や行動の変化が見られると言われていますが、私の経験上では、実際に手術の後に性格や行動が変わったことはあまりなく、個体差が大きいと思われます
去勢・避妊手術後に食欲が増したわんちゃんは多いです。

デメリット2.手術のリスクの心配がある

去勢・避妊手術は全身麻酔をしておこなわれます
術前の検査や検診でリスクを軽減することはできますが、麻酔の投与によって副作用や合併症を引き起こす可能性も考えられます。
命にかかわることはまれですが、手術にはリスクがあることも念頭に置いておきましょう

アニコム パフェ Y.N

アニコム パフェ Y.N

手術のリスクとしては、麻酔のリスクだけではなく、手術時の出血のリスクもあります
また、手術や入院のストレスを心配される方もいますが、手術や入院の痛みやストレスは一時的なことが多く、手術後数日はおとなしくなることがあっても、その後元通りになってくれることがほとんどです。

デメリット3.太りやすくなる

去勢、避妊手術後は、ホルモンバランスの変化によって基礎代謝が(20~30%程度)低下し、太りやすくなる傾向があります
手術前と同じ量を食べていると太ってしまうため、食事量の調節や適度な運動を続けるなど、肥満対策を心がけたいですね。

犬の去勢・避妊手術の費用目安

手術方法や入院日数、事前検査の有無によっても差がありますが、去勢手術は2万~5万円、避妊手術では3万~8万円くらいが相場のようです

アニコム パフェ Y.N

アニコム パフェ Y.N

動物病院は自由診療なので、費用は病院によって異なります
また、小型犬か、大型犬かによっても変わります。開腹手術になる避妊手術のほうが、去勢手術より高額になります。
加えて、特別な機器が必要になる腹腔鏡手術のほうが、開腹手術よりも高額になる傾向にあります。

去勢・避妊手術の適正時期

犬と時計
この時期までに去勢・避妊手術をしなければならない、ということはありませんが、生後6カ月頃を目安としておくのがいいでしょう。

犬種や個体差によって違いはありますが、生後5カ月頃から性成熟がはじまり、小型~中型犬の場合、6~10カ月頃にはじめての発情を迎えることが多いです。
また、避妊手術をしていないメス犬の場合、この時期にはじめてのヒート(生理)を迎えます。

病気の予防などのためには、はじめて発情やヒートが始まる前に手術をおこなうのが望ましいとされています。
ただし、大型犬や超大型犬は体が性成熟に達するのに時間がかかるので、生後1年頃を目安に考えてもよいでしょう

また、月齢だけでなく体のサイズも考慮する必要があり、体が小さすぎる子の場合は、成長を待たなければなりません。
その犬に合った時期を見極めるためにも、去勢・避妊手術のタイミングは獣医師に相談して決めましょう。

アニコム パフェ Y.N

アニコム パフェ Y.N

手術の時期としては、6カ月頃が目安になります。早すぎても麻酔に耐えられる体力がついていなかったり、まだ臓器が小さくく難易度が上がってしまったりする可能性もあります。
また、病院によっては、乳歯が全て永久歯に生え変わったかどうかで判断し、生え変わりまで待つこともあります。
初回発情前に手術するのが最も乳腺腫瘍の発生率を下げられるため、乳腺腫瘍の予防効果を考えると、早めに手術をするのが望ましいです

獣医師に聞いた! 去勢・避妊手術の時期についてのQ&A

大型~超大型犬は去勢・避妊手術の時期を遅らせることがあるのはホント?
本当です。大型犬や超大型犬の方が、成長スピードが遅いため、体重の増え方や体格等、成長速度を見ながら手術の時期を調節します。
去勢・避妊手術と大型~超大型犬の体づくりについて関係はあるのでしょうか。
体づくりとの関係は明らかではないですが、ゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーなどの大型犬で、1歳未満に避妊去勢手術をすると、股関節形成不全や前十字靭帯損傷などの、関節疾患のリスクが増加する、という報告もあります

【獣医師執筆】去勢・避妊手術の方法

どちらも全身麻酔下で手術をします。まずは、切開部の毛を刈り、消毒します。

去勢手術の場合

去勢手術の場合、陰茎のあたり(陰嚢の前のほう)の皮膚を切開し、精巣を摘出します。
手術時間は約30分~1時間ほどです。

避妊手術

おへその下あたりを切開します。卵巣のみ摘出する方法と、子宮と卵巣の両方摘出する方法がありますが、今は子宮と卵巣の両方を摘出するほうが一般的です。
終わったら、皮膚を閉じて終了です。手術時間は1時間~1時間半くらいです。

【獣医師執筆】去勢・避妊手術後の注意点

エリザベスカラーをつけた犬

術後~抜糸までの注意点

まず、傷口は清潔に保ちましょう。汚れてしまうと、感染を起こす可能性もあります。
犬が傷口を気にして舐めてしまうこともあるため、エリザベスカラーや、エリザベスウェアなどで、舐められないようにしましょう。
傷口に出血や腫れがないか、元気食欲や排泄など一般的な体調に変化がないか、注意してください
また、術後に内服薬が出ることもあります。処方されたお薬はしっかり飲ませましょう

術後の生活での注意点

去勢・避妊手術後は太りやすくなるので、体重管理を徹底しましょう
肥満につながらないように、食事量の調整やカロリーを抑えたフードを活用するなどの工夫が必要です。
また、体力が回復してきたようであれば、適度の運動も取り入れ、太りにくい体を保てるよう心がけたいですね。

獣医師からのメッセージ

去勢・避妊手術には、病気の予防や、発情に関連するストレスから解放する、ほかのわんちゃんとのトラブルを回避するというメリットがあります。
しかし、麻酔や手術のリスクなど、デメリットもあります。
大切なわんちゃんにとって、どうするのが一番いいのか、メリットとデメリットをしっかり確認して、決めてあげてくださいね

まとめ

なでてもらって嬉しそうな犬
愛犬を妊娠・出産をさせるのかどうかだけでなく、病気の予防や命を伸ばすためにも大切な去勢・避妊手術。しかし、手術にはある程度のリスクも伴います。
いつ、どのようにおこなったらよいのか、獣医師に相談し、愛犬にとってもっとも負担の少ない方法を選べるようにしたいですね。